10年前に 本棚の10冊で自分を表現してみる というブログ記事を書いた。 Twitterで当時流行していたハッシュタグに便乗したものだったが、それから10年も経てば選ぶ本も変わってくるよなと思い、再度選びなおしてみた。
![]()
猫に学ぶ
猫に学ぶ――いかに良く生きるかジョン・グレイ(著),鈴木晶(翻訳) .https://www.amazon.co.jp/dp/462209049X
猫から生きる哲学を学ぶというテーマで書かれた本。
「人間がなかなか手に入れられない幸福が、猫には生まれつき与えられているのだ。(p.6)」と、幸福・道徳・愛・死について、いかに人間が迷走しているか、そして猫のそれがいかに充足しているかを哲学者が語る。
かわいいタイトルと表紙だが、しっかり哲学の本。人生の目的だとか、将来に対する恐怖だとか、そういったものをを感じ始めたときに、この本を読み返したりしている。
「人生は物語ではない」、「眠る喜びのために眠れ」は最高に好きなフレーズ。
WORLD BEYOND PHYSICS
理論生物学者による生命の進化と複雑な生物圏の形成についての話。
この世界は機械ではない、ねじ回しのすべての使い道を列挙できないのと同じように生命の進化についても事前に言い当てることはできないのだ。全ての物質の力学的状態と力を知ることができるラプラスの悪魔がいたとしても生物の進化は見通せないぞ、と論が展開されている。
なにかの機能を実現させるための機構があったとして、その機構の部品や特性を転用すれば新しい機能が生まれる。また、ある生物が生活すれば廃棄物がリソースとなり新たな生活圏が生まれる。
生物多様性というワードを見たときにもこの本を思い出すが、エコシステムの発生や文化の形成といったことを考えるときにもこの本を思い出す。なにか新しいものをつくりたいときに、新しいニッチを探すための考え方として有用だったりする。
日常に侵入する自己啓発
日常に侵入する自己啓発: 生き方・手帳術・片づけ牧野智和(著) .https://www.amazon.co.jp/dp/4326653930
自己啓発書の傾向と分析が書かれた本。いわゆる自己啓発本にはどういうストーリーパターンがあるのか、どのように肉付けして受け入れられやすい啓発本にするのかが分析されている。
啓発書が「自分らしさ」や仕事術の獲得をどう焚きつけているのか、がベストセラーの概略や年代ごとのテーマの推移とともに語られている。
社会に浸透してしまっている自己啓発の考え方から一歩引いて俯瞰できるようになるという点でよい一冊。この本を読むと、普通の自己啓発本の内容が薄く感じてしまって読むのに抵抗感ができてしまうので注意は必要。
ヴァーチャル社会の哲学
ヴァーチャル社会の〈哲学〉――ビットコイン・VR・ポストトゥルース大黒岳彦(著) .https://www.amazon.co.jp/dp/B07MKG3LZG
情報社会の社会哲学的・メディア論的な考察。
ビットコイン・VR・VTuberといったものを話題にしながら情報社会の価値がどのように移り変わっていくのかについて述べていて、情報社会と実在世界とを対比しながら情報が実在世界に与える影響について論じている。
専門用語とそれを説明するための鍵括弧が多用されていて読みにくい本ではあるのだが、実在世界にかぶさるように存在する仮想空間と相互行為の新たな局面をこの本を読んで認識できるようになった。
新・基礎情報学
新 基礎情報学西垣通(著) .https://www.amazon.co.jp/dp/B09KTJRNMB
そもそも情報とは何なのか、情報というものの根本的なとらえなおしを考察する本。
情報科学におけるシャノンの理論を前提とする情報と、社会情報学で扱う情報の意味するものが大きく異なっていることを指摘しつつ、一神教の考え方をベースにしたトランス・ヒューマニズム、AIはどう活用されるべきかといったことが論じられている。
情報の意味とは本来、生きていく文脈や状況に埋め込まれた価値であり、機械と生命では情報に対するスタンスがまったく異なるというある意味当たり前のことを認識するのによい本だった。
週4時間だけ働く
「週4時間」だけ働く。ティモシー・フェリス(著),田中じゅん(翻訳) .https://www.amazon.co.jp/dp/4905042097
仕事を効率化・オートメーション化して、余った時間で遊ぼう!という趣旨の本。
アウトソーシング・オートパイロット・ミニリタイアメントを実行するための流れやノウハウが詰め込まれている。
10年以上前の本なので情報も古くはなっているが、まだまだ効率化のヒントにできるし、サービスやLLMの発展で当時よりもより実現しやすくなっていることも多い。
複雑さと共に暮らす
『誰のためのデザイン?』で有名なD.A.ノーマンの本。現実は複雑なのだから、テクノロジーにおける複雑さは必要であり、ボタンの数を減らすとかえって使いづらくなる、という主題。
シンプルなデザインがこの頃の流行りだが、機能をそのままに見た目をシンプルにすると混乱を招く。テクノロジーの構造と概念モデルを理解することで、複雑システムを簡素で意味のあるものにすることができる。という考えが書かれている。
『誰のためのデザイン?』も良い本であるが、この本も名著。
レガシーコードからの脱却
書いているコードをレガシーコードにしないための考え方と実践について。
『CODE COMPLETE』や『リーダブルコード』あたりの類書で、そのなかでも納得感というか腑に落ちる部分が多い本。リファクタリングに取り掛かる前に読み返すことが多い。あたらめて基本に立ち直って保守しやすいコードとはなにかを振り返るときの助けになる。
人間のトリセツ
人間のトリセツ: 人工知能への手紙 (ちくま新書)黒川伊保子(著) .https://www.amazon.co.jp/dp/4480072721
未来の人工知能に向けて、という体で書かれた人間の取り扱い説明書。
1988年にニューラルネットワークシステムを実装していたエンジニアが人工知能の可能性と人間の存在意義について語っている。
あらゆる知性で人工知能が人間を超えたとき、「人生を楽しむこと」が人間の仕事になると語り、学習のための失敗と好奇心が人間に必要になるということが軽快なタッチで書かれている。
私がAIブームに怯えず、適切な距離を保てているのはこの本によるところが大きい。ITに詳しくないがゆえに人工知能に対する恐怖心があるひとに読んでほしい。
幼児化するヒト
幼児化するヒト - 「永遠のコドモ」進化論クライブ・ブロムホール(著),塩原通緒(翻訳) .https://www.amazon.co.jp/dp/4309251897
文明を築き平和な社会を形成するにあたってネオテニーが不可欠だった、という論を述べる本。
幼児期にだけ存在していた特徴が大人の身体になっても保持される幼形成熟という現象があり、好奇心や従順さを保ち警戒心や攻撃的な性質が抑えられる。社会が大きくなり集団行動が求められるようになると、幼児化の方向へと進化が促されていった結果、様々なメリット・デメリットが表面化してきているという話が書かれている。
幼児的特徴は人によって差異があるので、それぞれどの程度幼児化が進んでいるかと進行度合いによる特長をどう生かせるかを考え始めると面白い。そして、案外社会は子供っぽさを求めているのだと感じられると、新しい楽しみ方もまだまだ探せるのかもなと思えたりする。
まとめ
10年前に選んだ本と比較すると選ぶ本のジャンルがそこそこ変わったなという印象を受ける。より面白い本を発見できたという話かもしれないし、『日常に侵入する自己啓発』が劇薬だったという話かもしれない。10年前はまだ学生だったし、現在は会社員としてそこそこの期間働いているのでジャンルが変わるのも当たり前なのかもしれない。
それでも2冊は10年前にも選んでいた本だったりもするし、変化していない部分もあるわけで、こうやってブログ記事として残しておくと振り返りができて面白いなと思ったりした。
また、今回振り返って好きな本の著者が新しい本を出していたことにも気づけたのも良かったですね。