いつもの。
万物の黎明
先史時代の人類が平等で無邪気な存在であるとか戦争好きな存在といった先入観・誤解を取り除くために、考古学と人類学の知見とともに格闘していく本。
人類が穀物を発見したため、農耕を主とした定住生活となり、人口が増えて都市となり文明ができた。というのが、これまでの常識であったが、これはどうやら現代からみた安直なストーリー付けであり、そこの対応関係はかなり薄そうだという論が展開される。
印象に残ったトピックとしては以下。
- 17世紀新大陸発見時に、優位性を求めたヨーロッパ人と自立した生活と平等な政治システムを持っていたアメリカ先住民。
- 農耕が始まる前から定住をしていた。また、栽培をするうえで都合のよいのは氾濫原であり、農耕の開始は土地の所有と結び付かなかった。
- 国家なしで人口の多い社会集団は多々存在したし、ヒエラルキーの発生も必然ではない。
先史時代に対する見方・考え方が変わる良書ではあるが、分厚く読みにくい言い回しの本でもある。
そのビジネス、経済学でスケールできます。
そのビジネス、経済学でスケールできます。ジョン・A・リスト(著),高遠裕子(翻訳) .https://www.amazon.co.jp/dp/4492315462
ビジネスがスケールしない原因5つとなぜその原因に気づけないのかについて経済学視点での解説。
思い込みや偽陽性はないか/対象者を過大評価していないか/大規模には再現できない特殊要素はないか/ネガティブなスピルオーバーはないか/コストがかかりすぎないか の5点をスケールできない原因として示す。そして、一部のサンプルで成功した事例を大規模にしたとき失敗するのはなぜかについて解説する。
経済学視点ではあるが、人間の思い込みによってうまくいくと思い込んで失敗する事例が続々紹介され、心理学的な趣も多々感じた。良書。
標本の発見
〈標本〉の発見 科博コレクションから国立科学博物館(著,編集) .https://www.amazon.co.jp/dp/4336075638
国立科学博物館の本。日本の生物多様性保全というテーマで、標本の写真とともに種の絶滅や保全についての解説が並ぶ。
標本に対する解説もさることながら、標本から非破壊でDNAを抽出する技術が開発されていること、展示されている標本は展示用に消耗品扱いで作られていることも驚きであった。
植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間
植物に死はあるのか 生命の不思議をめぐる一週間 (SB新書 623)稲垣栄洋(著) .https://www.amazon.co.jp/dp/481561895X
小説形式で語られる、植物とはなにか。
どうして植物は動かないのか。植物と動物の違いとは何か。草とはなにか。そういった疑問を教授が謎の学生からもらったメールに返信する中で考え応えていく。
都市と緑の人類史
都市と緑の人類史ベン・ウィルソン(著),森夏樹(翻訳) .https://www.amazon.co.jp/dp/4791775961
都市には多様な生命が生息しているとし、都市と自然における過去の攻防と、生物多様性に富んだ環境と都市が見られるようになってからの施策について書かれている。
ヨーロッパ圏での話題のため日本のものと比べると多様性が薄く感じるが、他地域で都市の自然がどのようにとらえられてきたのかの変遷が参考になる。