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2020年に読んで良かった 7冊の本

2020年も年末になってきたので、2020年に読んだ中で良かった本をまとめておく。

 

コロナ禍で引きこもっていたし読んだ冊数増えたかなと思いきや、83冊と例年と比べて少なめ。

図書館が休止したり、本屋に立ち寄ることが減ったりしたからかも。

 

ただその分、積読していた重たい本を腰据えて読んだりできたり、手に取る本の選抜を厳しめにしたりしたので、いつもより良い本を読めたなと感じる年でした。

 

そして、そんな良かった本の中から抜きんでて良かった本を7冊紹介します。

 

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WORLD BEYOND PHYSICS:生命はいかにして複雑系となったか

今年は生物系の本を意図して手に取っていたんですが、抜きんでて良かったのがこの本。

生物系だと他にも『都市で進化する生物たち』とか『まとまりがない動物たち 』なんかも読んでて発見がいろいろとあったが、この本は視点をひとつ上に持っていかれて生物とその進化に対して認識を変えさせられる。

 

内容は結構難しいので心構えは必要。この世界は機械ではない、ねじ回しのすべての使い道を列挙できないのと同じように生命の進化についても事前に言い当てることはできないのだ。全ての物質の力学的状態と力を知ることができるラプラスの悪魔でも生物の進化は見通せないぞ、と理論生物学者の第一人者が反論していく。

例えばアミノ酸には20種類程度しかないこと、心臓の機能は血液を送ることであって赤いことやドクンドクンと音を立てることは機能ではなく因果的結果であること、心臓が臓器として存在するのは1つの因果的結果を機能として利用できることに気づいたからであること、など。

 

生命とは何か、生命はこれからどう進化していくのか、事前言い当て不可能な世界をどうつくってきたのか。

理論面から生命の本質に迫る本に興味ある人はぜひ。

 
ブレーン・ハッカー

積読していてようやく手に取った10年前くらいの本。もうちょっと早く読んでおけばよかった。

 

企画とか解決策探しをどのように行っていけばいいのか、というアイデア発想法の本。
ただし、時代が時代なら秘伝とか奥義として受け継がれている類のアイデア発想法。

 

 創造的なアイデアは既存のものの組み合わせというのはアイデア系の本でよく聞く話。ではどこから持ってきてどう組み合わせれば良いのか。

 

例えば「ナビゲーション」の問題を抱えているときにどうするか。そんなときに「ナビゲーションの問題を抱えている人はほかに誰がいるだろうか?」と自問してみる。

もしかすると、迷路で迷ったネズミが何かを教えてくれるかもしれない。

 

問題を見つけたあと、解決のためのアイデアを他のところから借りてくる。

近くから持ってくれば盗作、遠くから持ってくれば天才。という考え方は数十年使えそう。

創作のアイデアとかに困ってる人はぜひ。


日本語をどう書くか

日本語で書かれた文章に対する印象がガッツリと変わる本。

1981年に初版だった様子。今年文庫本が出ていたので読んだ。

 

話し言葉と書き言葉は別の言語であり、書き言葉は外国語を翻訳するために人工的に作られたという内容。

文章を書いているときに、句読点の打ち方がわからないとか同じような文末表現が並んでしまう、みたいなことがよく起きる理由がこの本を読んでわかった。

 

もともと日本語には句読点は存在せず、江戸時代まで点や丸のない文章だった。

ところが、明治維新のあと外国の知識を素早く取り入れる必要が出た。そのため、外国語を日本語として理解するための手段として現代の書き言葉がつくられたとのこと。

つまり、漢文を理解するためにレ点がつくられたように、英語などの外国語を理解するための翻訳言語がつくられた。

外国語に沿った形になるように作られた、話し言葉とは異なる言語が、現代の日本の書き言葉になっているという説が述べられている。

 

なので、句読点はここ100年くらいの日本語文にしか出てこないし、文末表現の乏しい外国語を元に書き言葉が変わったので、ですますである程度しか文を締める表現がない。

 

この本を読んでから句読点を使うときに「英文に訳すとしたらどのように句読点を打つだろうか」と考えて打つようになった。そうすると確かに句読点が打ちやすくなっている。

 


ユニバーサルデザインの基礎と実践

バリアフリーデザインについて考えるにあたって、とっつきやすくわかりやすい良書。

 

視覚障害者や高齢者といった知覚の不自由な人がどのように空間認知をしているかといった基礎編。

視覚・聴覚・触覚から考えつつ実際のデザインにどう落とし込んでいくかという実践編。

基礎と実践、とタイトルにある通り基礎知識と実践方法が共に載っていて参考になる

 

例えば視力の弱い人は床とカーペットの境目や点字ブロックの色を目印にして移動しているとか、天井の蛍光灯の向きを進行方向に合わせることで誘導がしやすいとか。

空間のデザインをするにあたって参考になる考え方や視点が豊富にあるので、建築している人だけでなくゲームのワールドを作っている人の参考になりそう。



自己啓発の時代 

自己啓発をサーベイする本。

すごく良い本なのだけども欠点がひとつあって、Twitterに流れてくるインタビュー記事とかを読んでも「あの啓発パターンだな」と分析してしまって感動できなくなる。

 

内容としては、自己啓発本や就活対策本、an・anやプレジデントなどを通して、時代に寄って啓発内容がどう移り変わっていったか、どういう世界観を作り上げてきたのかを一歩引いた目線で見ていく。

 

かなり論文調な文章で、具体的な数値もびっしりと書かれている。

なんでan・anが自己啓発の本にでてくるんだ?と思ったら記事数だけで言えば心理ジャーナルよりもan・anのほうが心理系記事が多いらしく、へぇとなった。

あとは、男性向けは昔から現在までビジネスで活躍するための指南的なのが多いとか、女性向けはいい奥さんになる指南から自分探し系へと変化しており、特に自分探し系の啓発は女性誌に多くて男性向けの雑誌には少なめとか。

 

ネットにあふれる啓発記事とか本屋で平積みされてる啓発本がどういう要素に寄ったものかを把握できるので、ひととおり啓発モノを読んだ後に、この本と続編の『日常に侵入する自己啓発』を読んでみるのをおすすめ。


カーム・テクノロジー

必要なときに程よい通知をするのが大切で、不適切な通知を続けると電池を抜かれてしまう。目標到達に必要な注意力の量を減らすにはどうすればいいのかについて基本原則やエクササイズが書かれている。

 

テクノロジーが人にデータを提供するための手段となった今、どのように通知すればいいのかは難しい問題になっていて、Webアプリを作る仕事をしている私もその問題をひしひしと感じているところ。

 

いかにテクノロジーの気配を消すか、必要な時に自然に気付かせるにはどうすればいいのか。そのヒントが書かれているのがこの本。

大事な概念なのだが少し物足りない感じが否めない本ではあるので類書があれば教えてほしい。あとカームテクノロジーをWebサイトに盛り込んだ事例とかもあれば教えてほしい。

 

名前のないデザイン

休刊したWorks That Work誌の中からピックアップして翻訳した本。

 

必要に迫られてできた野性味あるデザインが20テーマほど取り上げられている。

例として軍用カモフラージュや公共相乗り、偽造証明書、不法占拠住宅など。

同じ地球で取材した記事なのにあまりに異文化すぎてフィクションかなと思える。

 

表紙になっているのは廃材で出来た椅子。

デザインの本というと小奇麗で小ざっぱりとした本が多いが、この本は真逆。

決してきれいではないし、なんなら違法なものも多々登場する。ただ、生きるために必要に迫られて発生したデザインの凄みを感じることができる。

 

人間のトリセツ

未来の人工知能に向けて、という体で書かれた人間の取り扱い説明書。
あらゆる知性で人工知能が人間を超えたとき、人間の存在意義として何が残るか。

 

20年以上前に書かれた『恋するコンピュータ』に対するアンサー本といった趣。

人工知能の導入やIT化で人間の仕事を奪う側の人にぜひ読んでおいてほしい。

この仕事が間違いじゃないなということと、その上で気を付けておくべきことが見つかる。

 

『恋するコンピュータ』を読んだときになぜか泣いてしまったのだが、この本でも涙腺が緩んだ。

古の時代のAIエンジニアというバックグラウンドでここまでエモく書かれたら巷のAI本じゃ勝てない。

 

後記

というわけで特に良かった7冊でした。

他にも知識がアップデートされるような本とか好奇心くすぐられるようないい本がたくさんあったのですが、今回は世界に対する見方とか考え方の根底が変わった7冊を紹介してみました。

他の本は過去記事で紹介しているので、そちらもよければ。

 

来年もおもしろい本に出会えるといいですね。