いつもの。
今月は動物の本が多め。
まとまりがない動物たち
動物の個性に関する研究について。
「動物に対して個性がある」ということ自体が人間の尺度で擬人化しているとして認められない時代の話から始まり、動物の個性がどのように認められてきたのかについて書かれている。
イルカや蜘蛛、オオカミやシジュウカラに個体ごとの性格を確認した研究や、遺伝と環境はどれだけ個性に影響するのかなど。
私の感覚からすると、各家で飼ってる猫に性格や個性があるのは当たり前のように思えるのだけども、研究対象としてみると個性があるのは不都合なのかなと思えたりもする。
そして、著者の飼い猫についての話が閑話として挟まれており、著者の猫に対するツンデレぶりもこの本の見どころの1つ。
与えるサルと食べるシカ: つながりの生態学
金華山島に住むニホンザルを20年掛けて追いかけた人のフィールドワーク記。
サルの暮らしや食べ物、環境への影響などがどのように観察したかまで含めて書かれている。
動物のフィールドワークってこんななのか……。大変だ……。という感想を持った。
フィールドワークの研究室に入ったばかりの人が読むとすごく参考になりそう。
動物たちのゆたかな心
動物の知性を計る実験の紹介。
動物に計画的行動は可能か、道具を使うことはできるか。
さらにはウソをつくことはできるか、他者の失敗から学べるかといった比較認知科学と呼ばれる分野の実験を紹介している。
色覚や行動の違いから、ヒトの心とどう似ていてどう違うのかを確認していく。
十数年前の本なので内容的には少し古いのだろうけども、基礎研究的な実験が多めなので比較認知科学のサワリを知っておきたいならおすすめ。
人をひきつける心―対人魅力の社会心理学
セレクション社会心理学の本。
そもそも魅力とはなにか、美人とは、個人対個人の好感度になにが影響するのかといった研究を紹介している。
対人魅力のベースになってる論文が多数紹介されており、先行研究を読みたい人におすすめの本。大学の一般教養とかの授業で教科書になってそう。
あいまいな会話はなぜ成立するのか
会話に関する研究の紹介。
なぜ遠回しに言ったほうが丁寧に感じるのか、わざわざ解釈の必要な返事をするのか、どのような返答だと解釈の処理コストが低くなるのかなど。
まだまだ研究の進んでいない分野の実験をかいつまんで紹介してる。
喫茶チェーン観察帖
チェーン店に的を絞って喫茶店のレビューをイラストで紹介している本。
チェーンの喫茶店と一口に言っても、オープンした時代や系列などで店の雰囲気というかキャラクターが全然違うのだよなと改めて気づかせてくれる。
写真でなくイラストなので、各チェーン店のキャラクターがより個性的に感じ取れる。
お茶盌は楽
楽焼と呼ばれる茶盌について、歴史や見方、どう作られてるのかまでかなり詳細に書かれている。
茶盌を作る人には一級品の資料かと。
茶筅摺りや茶溜りという内側のくぼみがあることで、細かく混ぜられはねにくくなるとか。印は高台(茶盌底の円)の上か左で、自信作の場合は中心に打つとか。
茶道に縁のない私にとっても完全に見知らぬ世界で非常に興味深く読めた。
図解デザイン 直感と魅力で伝えるインフォグラフィックス
インフォグラフィックス集。
類書と比べると年次報告書とかプレゼン用につくられた資料的なものが多め。
力あるグラフィッカーでないと作れないものかと思っていたが、資料とかに使うインフォグラフィックスなら絵心なくてもBlenderとか使えば真似できるのかも……? とか思えた。
Brand STORY Design
有名企業のブランドイメージについて、バックグラウンドとか関わった人達へのインタビューが紹介されている。
もともと日経デザインに連載していた企画の様子。
ブランド構築の具体例を見たいときにちょうどいい本。
万人のためのデザイン
人の大きさに合わせて作られた家や部位が欠損した人に合わせて作られた家具、その他人が使いやすいものとは何かについての研究や考察が書き込まれている。
本自体は展示会の図録といった趣。
人と空間が生きる音デザイン
場所ごとに合わせて環境音楽を作る試みの紹介。
実際のケーススタディを12件まじえ、音楽を環境の音に合わせて作る仕事を紹介している。
これを参考に……というのは音屋でない私には難しいが、紹介された場所に行ってどんなふうに聞こえるのか聞いてみたい。
少女禁区
ホラー小説のようなおとぎ話のような。
短編を2つ収録されていて、2つ目の短編で書名と同じタイトルの少女禁区が幻想的かつほろ苦さを併せ持った作品で非常に良かった。
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