2022年2月に読んだ本

いつもの

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新基礎情報学

トランス・ヒューマニズムとその行きつく先にあるホモ・デウスに対抗するための哲学。良書。

生命と機械の違いを考察しながら、そもそも情報とはなにかを見ていく。

 

私がスチュアート・カウフマン(複雑系の理論生物学者)に傾倒しているのもあって、この本の考え方にしっくりきた。

『ホモ・デウス』を読んだときに違和感、トランス・ヒューマニズムへ微妙に相容れなさがあったが、もともと一神教の考え方をベースにしているという説を読んでなるほどとなった。

AI原論 神の支配と人間の自由

AIの本質をみつめ、今後のAIのねらいやゆくえを分析する本。↑と同じ著者。読むなら上の本がよさそう。


相関主義哲学や主観主義的形而上学、思弁的実在論に言及し、トランスヒューマニズムの源流が古代ユダヤ教にあるのでは?と考察していく。

 

恋する化石

恐竜やアンモナイトといった古生物のオスメスについて。

古生物の図鑑や情報に書かれた書籍ではなく、そういった情報をどうやって推定しているのかについて書かれている。

 

限られた化石から恐竜のオスメスをどうやって判別するのか、数の多いアンモナイトや近縁種が現在生存する化石ならもっと明確にオスメスがわかるのか。
化石という標本の問題や、化石からどう推察しているのかを推理の背景がしっかり描きつつ考察されているのが面白い。

 

決定版 日本の雛人形: 江戸・明治の雛と道具60選

名作と呼ばれる雛人形の写真を通じて雛人形の文化、各作品のいわれや作風を見ていく。

雛人形の資料としてとても見応えがあった。

内裏雛の左右はどっちでもよかった、江戸時代後期の芥子雛という極小サイズの雛人形、あたりに特に興味惹かれた。

 

 

他の月

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2021年12月ー2022年1月に読んだ本

いつもの

 

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大気微生物の世界

大気中を浮遊する微生物について、何を研究しているのかどうやって観測しているのかを研究者が説明していく本。

このバイオエアロゾルという分野はまだまだ始まったばかりの様子。立山の積雪層からサンプル採取したり、観測地点で黄砂に付着する細菌が違ったりと興味深い。

 

かおりの生態学

植物の出すかおりは植物同士、あるいは動物とのコミュニケーションに用いられているということを実験生態学の研究者が実際の実験モデルを例に紹介していく本。

隣の植物が虫に食べられると、食べられたにおいを検知して近くにいる植物も固くなる、というのは聞いたことがあったが、より詳細に実験を通じて掘り下げられている。

同じ種類の植物が食べられたときにも防御反応が起きるが、さし木で増えたクローン体が食べられたときのほうがより防御反応が強くなるとか。

葉が幼虫に食べられたときに出すかおりが幼虫の捕食者を呼び寄せ、その捕食者の寄生蜂もかおりを嗅ぎ分け、捕食者が集まってそうなとこにくる。という話もあり、ゲーム理論ぽくておもしろかった。

 

光る生き物の科学 発光生物学への招待

発光する生物について。入門書の次に読むくらいの難易度で、これから発光生物学の卒論に引用されまくるんだろうなという感じの本。
光る生き物はあんがいありふれている、発光反応に関わる化合物はバラエティに富んでおり別ルートで進化してそう、など。

 

UXライティングの教科書

フォームの説明文やplaceholderに何を書くべきかについて。エラーメッセージや会員登録などのサンプルが困ったときに参考になりそう。訳本だからか違和感のあるサンプルもちょこちょこあるので、これの日本向け版とかでてほしい。

 

いいかげんなロボット

ソフトロボット学の考え方と可能性について。やわらかい素材を組み合わせた変形するロボットをどう制御しているのか、どのような応用が考えられるのか。コンピューター上でシミュレーションしきれないので、よくわからないまま動かすという考えが好き。

 

東京に生きた縄文人

東京都で発見された縄文時代の遺跡と発掘物、そこから見えてくる当時の文化について。同名の展覧会がこないだまでやっていた様子。

都内で発見された遺跡は3800か所以上確認されているらしく、想像以上に多く感じた。装飾のしっかりした土器も多く見ごたえがある。

 

 

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2021年に読んで良かった7冊の本

年末なので、2021年に読んだ中で良かった本をまとめておこうという記事。

 

そして、そんな良かった本の中から抜きんでて良かった本を7冊紹介します。

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家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている

家の中の生物多様性について。

たとえ家の中であったとしても、多様な種類の生物と共にしていて、しかも家の中の生物多様性が増すほど健康にはよさそうだぞ、という本。

 

協力してくれた一般家庭で埃を取ったり虫の死骸を集めたりと、生態系のサンプリングをしつつ、身近な生物についての研究を行っている生物学者が著者。

身近すぎる生物は、身近すぎて研究対象になりにくいらしく、窓のサッシに落ちてる虫の死骸が新種だったり、他地域にしか生息しないはずの生物が民家の物置にいる、みたいなのが新発見としてぽんぽん出てくる様子。

窓のサッシで虫を集めるよりアマゾンの奥地に出かけていって新種ハンターする方が生物学者にとって楽しいので、身の回りの生物についての研究はあまり進んでないのだとか。家のまわりで見つける虫が何を食べているかもよくわかっていないことが多い様子。

 

家に他の生物がわんさかいると聞くと殺菌・消毒の徹底をしたくなるが、人間に害を与える種はごくわずかで、むしろ家の中の生物多様性が増すほど有益な種が増えるとのこと。

殺菌・消毒の徹底した空間としてスペースシャトルの機内が紹介されているが、生物多様性が低くなった結果、かえって運動部の部室のように臭くなってるのだとか。

無作為に除菌すると生態多様性が減り、人にとって良くない生物が繁殖しやすい空間になってしまうので、窓を開け、植物を育てて、家の中の生態多様性を増していこう。そういうまとめだった。

 

大規模停電の記録

国内外の大規模停電事故について。電気インフラを即座に復旧できるよう対策を行ってる方々や普段通りに使えるよう運用してくださる方々に感謝の念が沸き立つ一冊。

停電をなるべく起こさないようにするためにも、過去の停電事例を学ぼう、と原因・復旧のながれ・事後対策が述べられている良書。

 

まずは日本の電気系統がどのように構成されているのかから始まり、自然災害起因の事故、電力システム起因の事故、海外の事例、これからの電力システムと続く。

電力網とはいうがつなぎ方には疎連系と密連系があり、日本は疎連系であること。電力の消費量に合わせて発電しないと周波数が乱れ発電所が停止すること。発電機を動かし始めるためにも電力が必要なので、全部の発電所が止まったときに復旧まで時間がかかることなどを知った。

 

阪神淡路大震災・東日本大震災といった大地震や積雪による停電、3年前に起きた日本初のブラックアウトである北海道ブラックアウトといった停電の詳細なレポートとともに、その停電をどう対処したか、得られた教訓・対策などを対処した電力会社自身が書き記している。

被災した電力会社が、電力を迅速に復旧するためにどう作戦立てどう対処したのかを当時撮影した被害箇所の写真や出来事をタイムラインにまとめた図を出しながら報告している。淡々とした描写ながら出てくる資料がほぼ1次資料なので生々しさがすごい。

 

電力会社の人達が後輩の育成のために書いた本だと思うが、一般のひとが読んでも興味深い内容ばかりなので機会があれば読んでほしい。

 

遺伝子命名物語

ユーモアな遺伝子の名前を入り口に、その命名者兼発見者となった研究者にスポットを当て、そのドラマを見ていく本。

10の題材を紹介している。ムサシやマージャン、ユーリイ・ガガーリンなど特徴的な名前を付けられた遺伝子について、その遺伝子がどう見つかったのか、そして何を思ってその名前を付けたのか。当の研究者へのインタビューを交えつつ紹介している。

それぞれに発見や命名までの物語があり、プロジェクトX的な読後感がある。生命科学研究者の研究模様を感じ取れるのも良い。

 

遺伝子についての新発見について述べる本でもあるので、研究内容自体は難しめ。しかしながら難しいはずの研究内容がとても理解しやすく書かれており読みやすい。細胞競合や平面内極性などの難しい言葉を一般人にもわかりやすく解説している。すごい。

 

10の題材がそれぞれ独立していてどこからでも読みやすく、遺伝子の新発見という生命科学の1分野を研究者の視点から読める良い本なので、特に人にお勧めしやすい。

 

坐の文明論: 人はどのようにすわってきたか

すわることに対する文化の違いについて。

すわり続けるのは健康によくないというが、それは楽にすわる方法を知らないからでは?という問題提起から始まる本。

 
床坐民族と椅子座民族という座る文化の違いで身体感覚がどう違うのか、椅子座民族は長い歴史の中で椅子をどう成熟してきたかなどを見ていく。すわり方の対比で人類史を見ていくようなスケールの議論が行われていて読み応えがすごい。

 

坐の形態の世界分布や床坐民族と椅子座民族の身体感覚の違い。さらには、座具が生活空間にどう影響していったかなど。椅子座民族のフランスや中国における椅子の種類や構造を事細かに解説していて、椅子の専門書としても読める。

 

すわりっぱなしになりがちなプログラマーが読むと、すわり方を見直すヒントになると思う。

 

UXデザインの法則 ―最高のプロダクトとサービスを支える心理学

ここから仕事関係の本。

ヤコブの法則やミラーの法則など、画面のデザインをするうえで有名な法則・効果をまとめたもの。

どこかで聞いたことはあるもののちゃんと意識出来てなかったなという心理学の法則や理論が2020年の実例と共に並べられ、耳が痛い……となる。

そして、いま作ってるプロダクトが思い浮かんで「あの部分はこうすればもっと良くなるのでは……?」ともなる。Webサイトのデザインするひとは一冊手元に置いておくと吉。ちょくちょく読み返すと改善のヒントが得られたりするので。

 

選択と誘導の認知科学

日本認知科学会が出している、教授とサイエンスライターがタッグを組み、認知科学の読み物を作ろうという「認知科学のススメ」シリーズの1冊。シリーズ全体を通して読みごたえがある。

 

今作は人の選択に関わるバイアスについて。

注意の張り紙はなぜうまくいかないのか、臓器提供のデフォルト効果をどう考えるか、ペプシ・パラドクス現象が起きるのはコーラよりもペプシのほうが味が説明しやすいからではなど、人の選択が持つ癖やその癖を本人がどう認識するのかについて。

 

デフォルト効果や選択肢を分割することでの影響、選択を説明させることがおこす影響などなど、何かを選択させるような仕事をしている人に読んでおいてほしい一冊。

このシリーズ通して、その分野の研究者が書いてるので、参考文献等もしっかりしていて良い。

 

よくわかるデザイン心理学 人間の行動・心理を考慮した一歩進んだデザインへのヒント

どういうデザインが人に好まれるのか、人がどこに注視しやすいか、といった心理学視点でのデザインの研究。

心理学の研究室から工学研究科に移り、デザインの研究を始めたという来歴の教授が書いていて、『Mind Hacks』とか好きなら楽しめるような本。

 

こっちはひとつ上の本より少しカジュアルながら、プロダクトデザインを行う上で役立つ知見が多い。 Change Blindness実験やマグニチュード推定法などWebサイトのユーザテストに役立ちそうな知見も得られる。

 

 

後記

今年の読了は80冊ほど。いつも以上に選書フィルタが稼働していた感があり、読む本を選べたなと思いつつ、もうちょっと冊数は増やしたいところ。

なにか新しい良書の発掘方法を考えたいところですね。

 

 

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